Jaga Jazzist@渋谷O-EAST

 行ったライブの感想なども書こう書こうと思いつつそのまんまになってしまっているので、今回は忘れないうちに書いてみる。(普段そこそこライブには行っているんだけれど、時間が経つと文章にするのがめんどくさくなってしまうので)
 昨日11/2(月)渋谷O-EASTJaga Jazzistのライブに行ってきました。初来日だったみたい。実を言うと、それほど熱心なファンというわけでもなく、CDは何枚か持っていてたまに聴く程度。でもずっと気にはなっているバンドではあったのでした。北欧系の来日はハズレ少ないしね。
 渋谷O-EASTに着いたのが18時ちょっと過ぎ。ちょうど開場するところで、せっかく観るのだしと思って最前から二列目ぐらいに陣取って開演を待つ。始まったのが19時ちょっとすぎだったかな、メンバーは9人ですでにこの時点で大所帯なんだけど、ほとんどのメンバーが複数の楽器を持ち替えて演奏するので、音だけ聞いたら14〜5人のメンバーはいるんじゃないかと思うほど多彩な音色を聴かせる。
 そもそもメンバーの名前すらよく知らないので間違いがあるかもしれないけれど、フロントは向かって左からドラムのMartin Horntveth、ヴィブラフォンはじめいろいろ持ち替えのAndreas Mjos、ギターやら木管やら持ち替えのLars Horntveth、キーボード全般のAndreas Hessen Scheiと並び、後列に残りのメンバーが並ぶという配置で、ドラムがフロントというあたりがまずなかなかに変わっている。このドラムのMartin HorntvethがMCも担当しており、非常に個性的かつ見栄えのする演奏でバンドを牽引している感じ。ちなみに彼の着ていたTシャツは「Public Enemy」。
 あとメンバーで目を引いたのはチューバ、フルート、小さめのグロッケンシュピール、それからコーラスと器用にこなすLine Horntveth。見た目はまあなんとも田舎くさい太っちょのお姉さんなんだけど大したもんだ。タンバリンやシェイカー的なパーカッションも演奏していたのだけれど、そんな打楽器も必要ない場面では自分のお腹を右手でぽんぽん叩いてリズムをとる姿がなんともキュート! PAのバランス的にチューバの音量が小さく聞こえづらかったのは残念だった。
 それからやはり後列で目立っていたのはトランペット、ウッド・ベース、キーボード、ヴィブラフォンまで持ち替えで演奏していたMathias Eick。楽器の持ち替えも、同じ系統の楽器ならまだしもトランペットとウッド・ベースの持ち替えってどういうことよ?とか凡人は思ってしまうのだが、このへんは北欧(と一括りにはできないにしろ)の音楽教育によるものじゃないかという気がしてならない。例えばFarmers Marketなんかもそうだけど、あの尋常でない楽器の持ち替えおよび演奏には確かに共通のものがあって、それは単に北欧人が器用だとか楽器演奏に長けているとかそういうレベルの問題ではないんじゃないかな、たぶん。
 あるバンドの音楽性を論じるのに別の音楽家を引き合いに出すというのはあまりするべきことじゃないのだけれど、過去の音楽体験の類推からしか語れない音楽的ボキャブラリーの貧困ということでここはご容赦くださいましな。Jaga Jazzistの音楽を聴いていて思い出すのはまずFrank Zappa、それからHatfield and the North(Line Horntvethのコーラスは一人The Northのようだ)をはじめとするカンタベリー系ジャズ・ロック、それからSteve Reichだろうか。彼らが実際に影響を受けたか否か、またはどれほど意識しているかはまったくわからないものの、こうした良質な音楽の持つ豊かさはJaga Jazzistの表現に何らかのかたちで流れ込んでいることは間違いないし、さらにそれを消化した上でエレクトロニカシューゲイザー的な要素も包含してオリジナルな音楽を作り出している。そう感じた。
 二回のアンコールを含めてあっという間の二時間だった。生で『All I Know Is Tonight』や『Oslo Skyline』(『Tokyo Skyline』と紹介していた)が聴けただけでも大満足。そしてこれも気のせいかもしれないけれど、北欧のバンドはみんなサービス精神が旺盛で、本人たちも楽しみ、客を満足させるための努力も惜しまない、そこがいい。
 推測のみの音楽教育の話とは別に、北欧諸国は自国の音楽文化の紹介にきちんと金を使っているからこそ、こんな大所帯のバンドが前売り4500円で観られるのであって、そうした援助がなければハコにもよるがとてもこの値段では呼べないだろう。国の援助がなければ優れた文化が生まれないと言うわけでは決してないにしろ、まず活動するための最低限の基盤があるかどうかでは大違い。レコード会社がいかにCDを売るかだけを考えていて、その価値観からしか音楽家が収入を得られないとしたら、そこに生まれる音楽文化はずいぶんいびつなものになるしかないと思うよ。
 11/4(水)に渋谷O-nestで(追加?)公演があるようなので、見逃した方はぜひ。