歌詞を深読み『ワンルーム・ディスコ』

Perfume楽曲の歌詞を深読みするのはみんな大好きだと思うので、今回も勝手に深読みしてみたい。


まずは一般的(と思われる)解釈をおさらい。


「なんだって少なめ 半分の生活」という表現で、今まではだれかと二人の生活(同棲or結婚生活)をしていたことが暗示される。
同棲生活を解消した理由については最後まで語られないが、少なくとも独り暮らしの新鮮さで主人公(以下便宜的に「彼女」と呼ぶ)の「気分は軽い」(それが強がりの空元気だとしても)。


同時に「そのうち楽しくなるでしょ」という言い回しは今の環境がまだ楽しくないという逆説的な表現でもある。
「新しい場所で上手くやっていけるかな?」という新しい環境への不安、そして「遠い空の向こう君はなにを思うの?」と元パートナーへの未練の気持ちも少なからずあるということがほのめかされる。


「たぶんできるはずって思わなきゃしょうがない」というやけくそ気味の表現になるのは、もちろん今までは「一人じゃぜったいにできない」と思っていたからだ。


シャンプーに関するくだりは、今までパートナーにどれほど依存していたかを端的に示している。
シャンプーの泡が入らないように目を閉じて「ねえちょっとー! シャワー出してー!」とパートナーに頼む(=甘える)というシチュエーションが普通にあり得るかどうかは別として、そのくらいに二人の仲は親密で不可分なものだったのだ。


次に曲調が唯一センチメンタルになるくだり。
「昼間みたい 街の明かりが」という表現で、彼女が夜はきちんと暗い田舎の世界から都会にやってきたことが示される。東京に来たってキュートな広島弁全開なのだ、きっと。
「星空」とは、かつていた田舎の世界では見るのが容易だった彼女にとっての大切なもののことだ。
しかし、都会では一見その大切なものと見分けのつかないまがい物が溢れかえっていて、彼女は新しい生活のなかでその大切なものを見失ってしまうことを恐れている。それは彼女にとってはとても切実な問題なのだ。


音楽をかけて計画をねりねりしたり部屋で踊ったりしているのは、そんな不安や未練を忘れたいからというのが半分、実際に「気分が軽い」(以前は多少なりとも重かった)からというのが残りの半分。
今の彼女の気持ちはきわめてアンビヴァレントで微妙なものだ。





以上、おさらい。
ここからはなんの根拠もない深読み。





さて、中田ヤスタカの書く歌詞は、一見まったく別のことを語っているように思えたとしても、実際にはPerfumeとそれを取り巻く状況についてが裏テーマ(あるいは真のテーマ)だというのが深読みストの常套的な切り口である。
では『ワンルーム・ディスコ』の歌詞を、Perfumeを取り巻く状況として解釈するならばどのように読めるだろうか。


まず主人公=Perfumeとする。
では「君」とはいったいだれか。
ここでは「君」=中田ヤスタカという説を採りたい。


Perfumeというユニットは今後何年存在し続けるだろうか。
二〜三年? 五年? それともそれ以上? 可能性としてはいろんなパターンがあり得る。


では中田ヤスタカが今後継続してPerfumeに楽曲を提供し続ける期間はどうだろう。
長く見積もって二〜三年? 特に根拠はないが五年続けることはない気がする。
中田ヤスタカのようなひねくれた(かつある意味高い志をもった)人が、もはや売れて当たり前の存在になってしまったPerfumeに売れて当たり前の楽曲を提供し続けることをよしとするかどうか。それは彼の矜持の問題なのだ。


Perfume中田ヤスタカの蜜月はもうじゅうぶんに長い。
お互いに戦友のような思いもあるだろうし、すでに簡単には切り離し難い存在になってる。
多くの人にとって、中田ヤスタカPerfumeのプロデューサーとしてもはや不可分なのだ。
しかしPerfumeが今後継続して活動していくのであれば、その期間が長くなればなるほどどこかで中田ヤスタカの手を離れなければならない。
その時期はいつか確実に訪れることだろう。


Perfume中田ヤスタカのいない新しい場所でうまくやっていくことができるだろうか。
もちろんそれは、たぶんできるはずって思わなきゃしょうがないことなのだ。